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ザ!霊障

ザ!霊障 第一部 16

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4月25日

 昨日は結局、柚矢は仕事に行けなかった。ここ数日、夜中に息が苦しくて眠れていないのだという。毎晩、寝る前に治療をしているのに、だ。
 どんどん悪化の一途を辿っている。それだけがはっきりした。
「明日は、どうしたって沿岸北部へ行ってこよう」と思った。どうせ、柚矢は明日も仕事なんか出来ないだろう。それなら、綺麗な海を見るだけでも良い。気晴らしでも良い。連れていこう。行方の分からない「岩手の神様」を探しに。
 
 会えるとは到底思えなかったが、もしも会えたときのためにと、地元の地酒をスーパーで買って、ガソリンを満タンにして、9時半頃に出た。
 滅多に使わない高速道路を使って、震災前の住所をとにかく訪ねることにした。
 そして、海辺のその住所地に辿り着き、とりあえず空き地に車を停めた。周辺を歩いて聞いてみようと思って外へ出たとき、道路の向こうの歩道を二人のご婦人、恐らく60代くらいの女性二人が農作業姿でカマを持って歩いているのを見つけた。そんな様子をしているのはこの近所に住んでいらっしゃる方に決まっている。
「あの人たちに話が聞きたい」
 と朱鷺は車の行き過ぎるのを待って、その人たちに近づき、声を掛けた。
「すみません、震災前にこの辺りに住んでいた―さんという方を知りませんか?」
 一瞬、考えた一人の方が、「ああ、―ちゃんね」と。「小学校の方に住んでるって言ってたっけかな?」
 もう一人の方は行方には心当たりはないご様子で首を傾げている。
 しかし、―ちゃん、と朱鷺の聞いてきたお名前が微妙に違う。単なる訛りかと考えようとしていたが、もしかして別人? と途中でドキドキする。
「県庁所在地の方に住んでた人でしょ?」と聞かれ、「いえ、そういう詳しいことは知らないんですけど。43の8という番地に住んでいらした方ですが」
「ああ、じゃ、―ちゃんだ」
うおぅ、良かった! しかし、お二人とも、行方は分からないご様子。でも、他に聞く当てはない。なんとしても、ここで情報を得なければならない! では、と。
「行方の分かる方をご存知ないでしょうか?」
「ああ、分かるよ」
 正直申しまして、そんなアッサリと「分かる」という返事が返ってくるとは思っていなかったので、朱鷺は何よりも驚愕した。
 え、分かる?!
 その方たちは彼女の弟さんがこの道の上に住んでいると教えてくださった。弟! 超! 身内ではないか!
 朱鷺の興奮を知ってか知らずか、そこの坂道をのぼって、左に曲がって…と、淡々とご説明くださる。
 おおおおおお! いったいどういうことだ! こんなに簡単に消息が分かるとは! もう分かったも同然だ! もしも今日会えなくても、知っている人を見つけた!
 今すぐ行かないと効果というか魔法が切れて使えなくなってしまう、という焦り。英語で言えば、as soon as possible! という勢いで、教えられた家を訪ねてみる。心臓はドキドキしっぱなしだ。家の前に車を停めるのは失礼かと、ちょっと行った先の公共的な建物の駐車場を勝手に拝借。お名前を伺っていたので、玄関先で表札を確かめ、その方の家だと確認。そして、玄関脇のキッチンと思われる窓に人影が見えて、ご在宅であることも確認!
 呼び鈴を鳴らし、「すみません」と声をかけると「はい」とすぐにお返事が。
「湯河原の方のご紹介で、お願いしたいことがあって、―さんと連絡を取りたいのですが、現在お住まいの場所をご存知でしょうか?」
「ああ、分かるよ」
 これも、至極あっさりと。
 ご相談があって、と申し上げると、そういう依頼はしょっちゅうあるのだろう、特に深いことは聞かなかった。
 その方は一度家の中に戻り、ハガキを手にして戻っていらした。その差出人、―さんの住所と電話番号をメモしている間に、弟さんは、朱鷺の名前を確認し、紹介者の名前を再度確認し、更にその場で彼女に電話を掛けてくださった。そして、在宅を確認し、今から(朱鷺が)行くけど、と話しを通して朱鷺と少しお電話を代わってくださったのだ。
 カーナビで設定して行きますから、と言ったのだが、辿り着くまでの道順を詳しく説明してくださり、最後に、「地図を描こうか?」とまでおっしゃってくださった。
 もう、お話しを聞いているだけで朱鷺はホッとして泣けてきた。
「花粉症ですか?」
 と笑われながら、「ありがとうございました」と一路、教えていただいた住所へ向かった。
 弟さんのところですでに12時半をまわっていたので、途中、スーパーに寄って、朱鷺はとにかくコーヒーを。新米社会人はベーカリーのパンを買って車の中で食べながら向かう。この道中の心はほんとうに軽かった。これで、なんとかなる。これで、柚矢は助かる、と。
 お約束した時間が13時頃だったのだが、着いたのときは10分を過ぎていた。それと思われる家の前で呼び鈴を鳴らしてみたが、反応なし。あれぇ? と思って携帯に電話をしてみたら、お返事はあり、朱鷺たちが立っている場所は間違いではない筈、という感じだった。
 すると、電話のお相手は家の後ろの道から表れ、朱鷺たちを反対側で待っていてくださっていたことが判明。
 ようやくお会いして、ご自宅に迎えていただいた。
 その方の第一印象は、「うわ、お若い!」
 50~60代の女性、という霊視(?)を頂いてこの方だと思って伺ったのだが、想像していたよりずっと軽やかにお若い方だった。そして、可愛らしい感じのお顔をしてらして、なんとなく誰かに似ているなぁ、という印象。ものすごく目の光が強い。
 車を降りるとき、柚矢には言った。「君が、自分でつらいことを説明して。必要なら補足はするけど、まずは話してみて」と。
 何を相談したいの? ということを聞かれて、柚矢が少し説明した。2年くらい前から仕事がやる気なくなってしまって、と。そのとき、名前は? 年は? と聞かれて答える。先を促され、昨年末から3ヶ月くらい休んで2月後半から復帰して働いているけど。
 朱鷺からしたら、まったくの触りしか話していないうちに、その方は、もう何もかもお分かりになったようにお話しし出した。
 内容としては、子どもが今こうやって苦しんでいるのは親が悪い、ということ。必要な会話をしない。必要な教育、躾といった基本を出来ていない、だから信念がない。自分がつらいということだけで他人の気持ちが分からない。子どもの数が少ないから本来の意味での必要な競争がない。子どもが二人しかいないとそれは一人と一人だから意味がない。
 そんな感じのことを10分くらいはおっしゃっていた。でも、それは朱鷺がこの頃感じていた危機感をまさにそのままで、その通りと思った。ただ、それを今ここで言われても朱鷺にはどうしようもないことでもあった。
 そして、いきなり言われたのだ。水子がいるでしょう? と。水子、という言葉にすでに「えっ」ということだったのに、続けて言われた。どちらかのきょうだいに、と。そのとき、朱鷺は自分のことを言われているとはピンとこなかった。そんな話は聞いたことがなかった。それで、勝手に朱鷺の親の世代のことかと考えた。
 親の世代には、水子というか、死産だったのか、戸籍に載らなかったらしい子がいるのを知っていた。その子のことかな、と思った。
「その子に手を合わせたことある?」
 と聞かれて、「ありません」と答えると、それじゃあ、その子がかわいそうだと思わないの? 自分のきょうだいは幸せに生きていて、自分だけが忘れられていることが悔しいし、悲しいでしょう?
 しかし、朱鷺にしてみれば、思ってもみないことであった。自分の伯父か伯母に当たるであろう相手ではあっても、現実にそこにいなくて、写真もなくて、その存在すら、何かの拍子にちょっと聞いたことがあった程度のことで、当時は死産や、衛生状態が悪いために生まれてすぐに亡くなる赤ん坊もいたらしい、という知識でしかなかったから。
 そうですね、と答えながらも、自分のきょうだい? とちょっと違和感を抱いていた。しかし、そういう生きられなかった子どもの心は分かる。分かる気がするから、ただ頷いた。
 その子のために、盆正月に、買ったお菓子で良いから、お供えして手を合わせてあげなさい。
朱鷺たちが着く前にふわふわ霊がその辺にきたから、ああ、そろそろ来るな、と思って外に出て待ってくださったと「岩手の神様」はおっしゃっていた。
 柚矢が働いている建物、職場がそもそも霊や念が集まる場所だと言われる。来るお客さんの念や、一緒に働いている人のものや、いろいろ、と。そして、やはり言われた。柚矢は、そういう念を受け易いというか、憑かれ易いのだと。その水子の念が中心となって呼んでいるのだと。
 手を合わせてみて、と柚矢は言われて、手を合わせる。そして、彼女は柚矢の姿勢を見て「苦しいでしょ?」とおっしゃる。「はい」と答えると、「じゃ、一緒に言って」と彼女は何かを唱える。それを柚矢は復唱する。その後、朱鷺にも一緒にやってと言われ、手を合わせてとにかくひたすら二人で「南無阿弥陀仏」を唱える。二人で唱え続けている間、彼女は何か別のことを言っていた。祝詞なのかよく分からないが、何かしてくださっていることだけ、分かった。
 そして、ある瞬間、聞いたのだ。「楽になったでしょう?」「はい、楽になりました」
 後で聞いたら、あ、なんか楽になってきた、と感じていたそうだ。それはちょうど(肩凝りや喘息の)治療を受けたときに楽になっていく感じに似ていたと。胸の中に塊―もやっとした塊がある感じが抜けた。頭ももやもやしていて、何か変に妨害されている気がする、重力として重さを感じるわけじゃないけど、どっちかっていうと圧力を感じるような―深海に行った感じ、それが外からだけじゃなくて内側からも苦しい感じ、それが常にあったのだと。
 喘息の治療をしても、気道が狭くなって息が苦しいのとは違っていたから、何かがおかしいとずっと思っていたそうだ。
 その方は、柚矢のその苦しいものをご自身に移してそれを浄化してくださった、らしい。
「もう少し遅かったら、イヤなことになってたかも知れなかったね」
 と彼女はおっしゃった。「死にたかったでしょ?」と。
 それは柚矢の弱さがさせるのか、霊障だったのか定かではなかったが、まさに命の恩人であった。友人のお友達である霊能者の方が「一刻も早く」とおっしゃってくださったわけが分かった。
 今後、その水子の供養をしてあげなさい、ということと。
 弱いから、と首都圏在住の友人のお友達の霊能者さんもおっしゃっていた。憑かれ易いというのか。朱鷺は感受性が強いという言葉で理解した。霊が憑くヒトってのは、だいたい優しい人なんだと思う。つまり、断れない、気弱なヒトということでもあるのだろうか。或いは生命力のような‘ひかり’がもともと弱く薄いのか。
 いずれ、柚矢はそんな感じなんであろうか。またしても似たようなことを言われていた。
 一度、今いる霊を昇華していただいたが、憑かれ易いが故、また憑かれる可能性がある。だから、防御しなさい、ということで、その方法を教わってきた。
 基本は、粗塩を持ち歩くこと。
 手を合わせて「南無阿弥陀仏」を唱えること。
 氏神さまにお願いすること。
 家の周囲に粗塩を蒔きながら時計回りにまわること。
 人ごみには出かけないこと。
 そのとき、仕事に関して、柚矢は迷っているようなことを言った。
 仕事を辞めても良いですか? と聞いたら、「ならん!」と言われた、とその方はおっしゃった。え、誰が? と思ったが、いずれ、仕事は向いてるかどうかまだ分からないんだから、続けてみなさい、とおっしゃってくださった。続けても大丈夫だ、と。
 柚矢が言うには、その方は柚矢の顔ではなく、少し高い位置を見て話していたそうだ。つまり、背後にいる守護霊と会話していたのだろうか、と思う。そして、その守護霊に聞いてくれていたのではないかと。
 帰路は、柚矢がほんとうに楽になったらしく、ずいぶんリラックスしていた。そして、それまでの辛かった状態の具体的な話しを聞いた。
 そして―思いもしなかった方向へと事態は動いていったのだ。
 帰路で、心配して家で待っていた祖父母から、何時頃帰るのかとメールが入っていた。体調が悪いのに長時間のドライブは大丈夫なのか、と。
家に帰り着き、経過を話して、元気になった柚矢を見て二人は喜んだ。
「柚矢のそんな笑顔、久しぶりに見た」と。
 そして、知った衝撃の事実。
 水子は、いたのだ。朱鷺のきょうだいに。今までまったく知らなかった朱鷺の兄か姉が。
「水子はいる」と弱々しい口調で祖父は白状した。恐らく、こんなことがなければ、生涯明かされなかった事実だったのだろう。
 なんてことだ、と朱鷺は思った。どう表現して良いのか分からない。信じられないという思いと共に、だけど、「やっぱり…」という気もした。「ああ、だからだったんだ」という妙な感慨と。
その子のために、朱鷺と柚矢はお菓子を買い、お線香をあげた。
 まだ道半ば。家に憑いているものは、まだいる。
 柚矢は部屋に入ると苦しくなる、というので、その夜はとにかく、布団を持って朱鷺の寝泊りしている部屋に移ってもらった。そして、部屋の四隅に盛り塩を置いた。

 その日、帰ってきて、報告を終えて少しゆっくりしていたときのことだ。
「4月25日だ」と柚矢が言った。
何が?
「いや、今日が」
あ、ほんとだ。
「‘しにご’―死に子―」
 生まれずに葬られた子どもの御霊が呼んだのだろうか。
 早く生まれ変わって、今度は幸せな人生を過ごし、寿命をまっとうして欲しいと願う。

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