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ザ!霊障

ザ!霊障 第一部 8

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12月22日
 霊障と表現される現象はこの日から始まった。
 祖父母と時雨はその頃母屋に、柚矢と朱鷺は離れに住んでいた。
 柚矢の部屋の真下は祖父母の産直出荷の作業場になっている。現在、そこに引越し先から引き上げてきた柚矢の机とかカラーボックスとかを仮置きしている。
 それから、朱鷺が寝泊りしているのは、その隣の部屋。
という前提のもと。
 最初にそれが起こったのは、というか気付いたのはたぶん11月24日の夜中。
 階下の小屋の床を、ズズ…と何かを引きずる音が聞こえた。柚矢は割と早めに寝るけど、時々夜中に灯りを点けたりして起き出すこともあったし、当時、一番不安定だったから、もしかして夜中に突然思い立って、自分で机を動かそうとしているんだろうか、と思った。まぁ、でも一人で動かせるような代物じゃないんで、諦めて寝るだろうと思って放っておいた。
 ところがだ。翌日、柚矢は朱鷺に聞いた。
「夕べの音、聞いた?」
 つまり、あれは柚矢ではなかったのだ。二人で同時に、しかも別々の場所で聞いていたということは、音は確かに発生していたということ。
 作業小屋に行って机とか柚矢が置いているものを確認してみても、動かしたような跡もなければ、何か変なものが増えている訳でもない。そもそもその小屋に入るためには扉を開けるか外からならシャッターを上げなければ入れない。しかし、扉を開ける音や、もちろんシャッター音なんかは聞いた覚えはない。つまり、人間の仕業ではないということだ。犬や猫に重い家具は動かせる筈もない。まぁ、出来るとしたら熊だろうか。(この辺に出没したという記録はないが)
 それ以降、日を置いて、何度か木製の何かを引きずるような音、柚矢に言わせると階下に一緒に置いておいたキャスター付きの家具を動かす音なども時間を限定せずに聞こえていたらしい。
 一度は、ハルくんがすごい勢いで階段を駆け上がってきて、朱鷺の布団に潜り込んだことがあった。その夜は、朱鷺は音は聞こえなかったが、ハルくんが来た後、柚矢が朱鷺の部屋に顔を出して「今の音、聞いた?」「え、ハルくんが来たよ」「違う。下でまたずず…ってやつ。そしたらハルくんがすごい勢いで階段のぼってきた」「ええ? 今日は何も聞いてなかったなぁ」
 話している間にロイチャもやって来て、その夜は結局猫たちは朱鷺の部屋に泊まった。
 その後も、朱鷺がまだ起きていて母屋でテレビを観ているときに、柚矢が部屋から出てきて、「また聞こえた」ということもあった。
 引っ越しのときに持ち出して、まだ部屋に還れない荷物だから、何か訴えたくて音を出しているんだろうか、と柚矢は少しずつそっちの整理も始めて、カラーボックスは「今までありがとう」とお礼を言って解体処分することにした。
 そして、22日の本日の夜のことだ。作業小屋の隣の部屋にいたハルくんが、突然何かにひどく怯えたような変な鳴き声を出して柚矢の部屋に飛び込み、ベッドの下に入り込んで出てこなくなったそうだ。
 そのままベッド下で何かを視線で追っているという。二人でベッドの下を覗き込んで呼んでも、ハルくんは出てこなかった。
 ロイチャを連れて行ってみたら、ロイチャはハルくんの傍へ行き、二人で何か会話を交わして、彼女もしばらくベッド下にいたのだが、やがて出てきた。
 え、それで終わりかい? ロイチャ。
 朱鷺は、さっぱり何も感じないし、最近は夜更かし癖がついて夜中まで起きているので、部屋にいるときにしか聞こえない「その音」そのものを聞いていないのだが、何かあるよな、ということだけは感じている。
 雄猫が怯える何か?
 だって、同じ場所にいても、ミッチ(くるみ)は平気で眠っているからなぁ。 

12月23日
 昨夜の顚末。
 ハルくんは柚矢がベッドに横になってもずっと怯えたままごそごそ動き回り、時々変な声で鳴き、やがてベッドの下から出て、机の下に隠れてみたり、壁にくっついてみたりしながらも鳴いていたそうだ。そして、今度は柚矢の部屋を飛び出して朱鷺の方へやってきて、いつもなら寝ている部屋の襖をガリガリやって「開けて」とアピールするのに、ただただ怯えた声で鳴いたまま隣の部屋の隅で固まっていた。
 起きてきた柚矢と一緒にハルくんを宥めるとしゃがんだヒトの足の間に必死に隠れようとする。起きていても寒いだけなので、抱き上げて「よし、じゃ一緒に寝よう」と布団に連れてって一緒に寝たのだが。
 それが午前3時。
 抱き上げたときハルくんはブルブル震えていて、布団に入れて撫でても、朱鷺の手が動くのに怯え、寝返りをすると怯えて飛び出して窓の下に行って固まる始末。
 しばらく電気を点けてどうするのか眺めていたが、ただ座った姿勢のまま壁に寄り添い、次第に眠そうに瞼を閉じそうになっているから、起き上がってそばへ行き、抱き上げて一緒に布団に入る。イヤがるかと思ったら、緊張したままであったがとりあえず一緒にいた。
 そんなことを続けているウチに朱鷺は3時からほとんど寝てない。
 柚矢は、ハルくんが駆け込んできた夜中過ぎから3時まで眠っていないそうだ。
 ハルくんもほぼ一晩中緊張したまま眠っていないんじゃないかと思う。
 いつもの通り、5時過ぎに階下へ行ったハルくんは、今度は作業場へ入り込んでおかしな声で鳴き続けていたそうだ。不思議に思った祖父母が、ぽんちを連れて行ってみると、ぽんちも、わお~ん、わお~んと変な鳴き方をしたという。ハルくんが潜って鳴いていたのは柚矢の机の下よりもうちょっと奥の物置き場。そこを覗いてみても、特に何もなかったと祖父母は言っている。その後、いろいろ片付けてみてもらったが、もちろん何もおかしなものは出てこない。
 朝、朱鷺が起きたとき、ハルくんは外にいたので、「ハルくん!」と呼んでみた。すると、やつは「ごろにゃん」と言いながら戻ってきた。しかし、抱き上げて連れ帰ろうとすると、びょん、と腕から飛び出して庭へ逃げていく。何度か試してみたが、家の中に入るのをイヤがり、抱っこをイヤがり、すぐに外へ出て行ってしまう。なんとか家に入ろう、と誘って連れて来ても、すぐに外へ戻ってしまう。外で遊ぶわけではなくて、庭にただ雨に打たれたまま固まってこっちを見ていたり、ちょっとその辺を歩いたりという状態。結局、半日以上外にいたらしい。
 らしい、というのは。朱鷺はお昼前にバイトに出かけたからその後のことが分からん。
 夕方、バイトから戻ったときにはハルくんはようやく家の中にいた。柚矢が、一日何も食べなかったハルくんに、彼が外のテーブルの上のダンボール箱にロイチャと一緒に眠っているとき、缶詰めを持って行って「ほら、カルカンだよ」と匂いを鼻元に送ったら、はっと起きて、その場でガツガツ食ったそうだ。その後、腹が減ったらしく家に戻ってドライフードも食べたらしい。それでも抱っこはまだ少しイヤがるようになっていたが。
 柚矢が、ここしばらくいつも使っているお香を、その日は一日に11本あちこちに焚いてなんとか空間を清めていたらしいが、それでなんとかなってくれれば良いなぁ、と。
 何かがいることより、ハルくんが、怖いから家に帰ってこない、という事態の方が深刻だ。

12月24日
 その後のその後。
 今朝、ハルくんは、抱っこされるとでれ~んと伸びて警戒心のカケラもないいつものハルくんに戻っていた。柚矢のお香作戦が効いたのか。
 実は、本人も最近、右側の脊中から肩甲骨、右の肩(肩井付近)に痛みを訴えていた。運動痛ではなく、実は安静時痛・夜間痛もあって、正直、ぞっとしている。それって、かつて癌で亡くした朱鷺の患者さんと同じ痛み方なんだよな。
 今日は、その患者さんにしてあげれば良かったと後で後悔した椎間灸をがっつりやってみた。
 で、なんでこんなハナシかというと。
 加門七海さんの本『猫怪々』にあったが、‘つきものおとし’をちょっと真剣に考えちゃったからだ。もしかして、柚矢の症状も、ハルくんが怯えた何かも、その類のモンじゃないかと思えたのだ。
 もしかして、その①。動物霊。ねむち? と一瞬考えたが、きっと違う。そうだったらむしろ嬉しいくらいだ。でも違う。あの子はもう天国へ行ってしまったと思う。そういう「何か」を残すことはないと思う。良い子だったしね。
 動物だったとしても、あの子以外。かつて家にいた子たちではきっとない。野生動物とか、そういうモノの塊とか、かな。
 もしかして、その②。新米社会人が僅か数日寝泊りしたあの家のかつての住人の霊を連れて来ちゃったのか。家具の方が長くあそこに、しかも仏壇のある部屋にいたから。だとしたら、悪いけど、大変な迷惑だ。早々にお帰り願いたい。
 もしかして、その③。朱鷺のバイト先のお客さん? と、一度はチラっと考えたが、そんな訳はたぶんない。まったく思い入れのない他人だし、仕事としてしか見てないから、客に興味もない。時雨の同級生の弟さんの葬儀のとき以外、感情移入したこともなかったしな。だって、大抵の故人は大往生だね、もう悔いもないだろう、ってお年の方々ばっかりだ。
 とりあえず、思いつくのはそのくらいで、ハルくんが元に戻ったから良いとする。

 12月25日
 更にその後。
 今朝ほど、首都圏在住の幼馴染みより「霊とかその様なものの類であれば浄化には粗塩が効くらしい。盛り塩とかね。霊感が強くて除霊とかもやってる友人が言ってたよ」と連絡をいただいた。で、はっとする。そりゃ、そうだ。やはりどこかパニクってたのか、そんな基本的なことも忘れていた!
 それから、柚矢と少し前から話していたが、やはりこういうときは神頼みだ! ということで昨日はお神酒にしようと少々高い良い酒も買ってきた。けど、ハーフボトルのそれを神棚にあげたら神棚が崩壊しそうな気がしたんで、おちょこについであげようと考えていた。
 朝、早速、盛り塩を小屋の作業場のシャッターの出入り口の両脇に置いた。
 その後、何年か振りに朱鷺は神棚の掃除をした。拭き掃除をして、埃を取り除き、南天を庭から採取してきて(ウチの庭には紅白の南天があるのサ♪)白い花瓶に生けた。そして玄米と粗塩の盛り塩と中央に白い陶器のおちょこにお酒をあげた。日本酒のすっごい良い香りが漂った。それから、かがり火にローソクを立てて焚いて、…うっかりそのままバイトに出てしまった。
 そして、最後の怪現象!
 ハルくんの左前足の付け根近くに、朱鷺の親指の太さくらいの小さい輪ゴムがはめられているのを発見した! え、とハルくんを撫でていた夜に気付いて慌てて外してみたら、もうすっかりハルくんの足の皮膚はその型がついて壊死し掛かっているように見えた。数日間はそのままだったと思われる。ずっとハルくんの足が異様に太いような気がしていたが、気のせいではなかったのだ。
 そんな酷いいたずらをするようなニンゲンは朱鷺の家にはいない。バカみたいな猫好きばっかりなのだ。
 あの夜、ハルくんが怯えたのは何者かにそんな酷いいたずらをされたからなのかも知れない。
 そんないたずらをする悪霊?
 ハルくんはその輪ゴムを外してあげたら、しばらくしばらく、左前足をしっかり舐めていた。朱鷺もちょっと血流改善させようと足先から体幹に向けて強めに撫でてあげたりはしたのだが。
 ハルくんは割と人見知りをするので、知らないニンゲンに近づいたりはしないし、子どもは嫌いだし、正直、ハルくんにそんなことを出来るニンゲンはいない筈…ということが更に謎。(ロイチャは人懐こいので、初めて会う人にも抱っこされるが)
 まぁ、いずれ、そんな悪いもんじゃないような気がするし、今回は、これでなんとかなってくれればなぁ、と期待している。
 っていうか、猫に悪さをすんな!(プンスカ!)


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