天女のように

天女のように 14 悔恨 

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 ただいま、と声が聞こえたかと思うと玄関にはランドセルだけが放り投げられていて、どこかへ遊びに行ってしまう薫とは違って、暁は感情をあまり表に出さない我慢強い子に育っていた。赤ん坊だった薫と違って、暁は大人の都合に寄って振り回された悲しい時間の記憶があるからだろうか。世の中の理不尽さを、運命の残酷さをイヤというほど味わったというような透明な目をすることがある。まるで、空気に溶けていきそうな。―ああ、この目を知っている、と私は思う。

 兄の目、だ。

「お母さん、お腹空いた!」

 夕方遅くになって、薫がバタバタと帰ってくる。薫は底抜けに明るくて、自由奔放で友人が多い。初めて会った子ともすぐに打ち解けて話しを始める才能には感心してしまう。常に自分のしたいことにしか目がいかないので、勉強には興味がなくって内心ハラハラするのだが、元気なことは良いことだ、と自分を納得させる。いや、暁を見ていると、子どもらしい薫に対して「これが正しい姿」なんだと分かってしまうのだ。

 暁は、何故だろう―祖父母にはもちろんのこと、私に対してもどこか遠慮しているというのか。欲しいものを欲しいと言わず、食べたいものを食べたいと言わず、更にそういう子どもなら当然の欲求が薄い子だった。与えられるもので満足しているのか。望むこと自体を諦めているのか。

 まだ、小学生だよ? まだ10歳の子どもなのに?

 私の育て方が悪かったのか、と私は苦悩する。
 何故なら―。思い当たることが一つだけ、あるのだ。

 それが原因なのかは分からない。だけど、一因ではないのか、と不安に思っている出来事。

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