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聖~セイント~

聖~セイント~ 36 悪夢

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 名前を呼ばれて、はっと目を開けた。夢の余韻が生々しい。
 夢―?

「大丈夫? どこか打った?」

 俺を覗き込んでいた茉莉と目が合った。

「あ―、茉莉さ…」声がかすれていて、俺は眉をひそめる。
「貧血みたいね」
「え」明かりを背にした茉莉は、うっすらと彫像のような笑みを浮かべる。「俺は…?」
「倒れたのよ」

 そこはリビングの床だった。窓の外は真っ暗で、あれからさほど時間が経っていないらしいことを知る。
 身体を起こそうとして、背中に鈍い痛みを感じた。

「倒れた拍子にテーブルにどこかぶつけたでしょう?」

 俺の身体を支えながら、茉莉は俺の手首に触れ、脈を測っている。その俯き加減の横顔をぼんやりと見つめながら、俺はたった今見た「記憶」の断片を反芻する。そう、あれは夢なんかじゃない。俺の「記憶」だ。

「俺は、何か言いました?」

 茉莉は顔をあげた。

「そうね」そして、答えた。「救急車とか、助けて、だとか…そんなことを言ってたわね」
「ほ…他には?」
「…さあ?」

 茉莉は俺の手を離して立ち上がった。

「部屋へ戻れる?」
「茉莉さん」慌てて俺は声をあげる。
「もう遅いし、休んだ方が良いよ」
「待って、茉莉さん。俺は…」

 立ち上がろうとした俺の手をとってそれを助けながら、茉莉は僅かに表情を歪めたように見えた。

「ごめん」
「…え?」
「ごめんなさい。言うべき言葉じゃなかった」
「何を―」俺は彼女が何を謝っているのか分からなかった。
「そうね、後でゆっくり聞きたいことはある」

 ごくりと唾を飲み込むと、彼女は目を伏せて俺の両腕をそっと掴んだ。

「でも、後で良い。今はまだ―」

 たった今思い出した最悪で残酷な事実。あれは、―あれは、きっと茉莉の恋人、啓二の最期だ。結果的に、俺は彼を殺したのだ。或いは、あのナイフはもみ合った事故で刺さったのではなく、俺が殺意を持ってそうしたのかも知れない。あの「記憶」には俺の感情が抜け落ちていて、真実がまったく分からなかった。

 混乱のあまり、俺はそれを茉莉に話そうとしていたのだが、彼女が一人で部屋へ去った後ろ姿を見送って、俺は分からなくなる。あれは、伝えても良い事実なのだろうか? そもそも、あれは本当に間違いのない俺の「記憶」の一部なのか? 俺が勝手に捏造した歪んだ記憶ではないと誰に言える?

 茫然とその場で時間を過ごし、何も考えが浮かばないまま、俺は疲れきった身体を引きずり、とにかく部屋へ戻るしかなかった。



 その夜の夢は最悪だった。

 泣いて「彼」の遺体に取りすがる茉莉の姿が現れ、俺はなす術もなく彼女の背中を茫然と見つめる。やがて顔をあげた茉莉は、俺を「人殺し!」と罵る。「啓二を返して!」その嘆きに返す言葉はなく、俺は掴みかかってくる彼女の涙をただ見つめてうなだれるだけだった。

 何度もあの空き地でのシーンが再現され、俺はその度にあの悲劇を回避する方法を模索するのに、シナリオの変更は不可能で、俺を恨みがましい目で見据えながら、「彼」はやはり海へ落ちていく。放すまいと彼の身体をどんなにしっかり抱きかかえても、ある瞬間が来ると、もぎ取られるように引き離され、俺の手は彼から離れてしまう。

 叫んでも、声の限りに呼んでも、もう「彼」の姿は見つからない。
 その、繰り返しだった。


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